東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場が、“木と緑のスタジアム”のA案に決定され、五輪エンブレム問題とともに解決の兆しが見えてきている中、いまだ解決の糸口が見つからないのが東京ビックサイト問題。

東京オリンピック・パラリンピックでの東京ビッグサイトの利用を東京都が発表(のち計画変更)してから、11月20日に日本展示会協会(以下、日展協)が代替案とともに署名を求める特設サイトを開設していますが、サイト開設から約1ヶ月で4万9千人超もの署名が集まっています。
五輪エンブレムや新国立競技場以外にもあった問題について、少しふれたいと思います。

オリンピックのメディアセンターとしてビックサイトを全面的に使用

東京都の計画案として、「ビッグサイトは2019年4月から2020年11月までの20ヵ月間、国内外の報道陣の取材拠点となる国際放送センターとメインプレスセンターとして全面的に使用される」と公式に発表しています。

これに対し日展協は、ビッグサイトを利用する計画を変更し、ビッグサイト近隣の「防災公園」にメディアセンターを新設する計画を東京都に要望しつつ、一般に対し「一緒に声を上げて」と署名活動への協力を求めています。

オリンピックでのビックサイト使用による影響

日展協によると、東京都の計画案が現実になれば、ほぼ全ての展示会が中止に追い込まれるという。理由としては、日本にある他の展示会場では、ビックサイトほどの広さがない上、ほぼ全ての施設で稼働率が高い状態にあり、ビッグサイトの代替会場にならないとしています。

また、経済への影響として、下記を含む公式声明文を発表しています。

① 5兆円の売上げが消滅
毎年、約9万社の企業が約300本の展示会に出展し、約3兆円の売上げをあげている(平成19年のビッグサイト公式記録による)。これを20ヵ月間に直せば、500本の展示会で推定5兆円になる。展示会が中止になれば、これらが全て消滅し、日本経済に壊滅的な打撃を与える。
② 多数の中小企業が、倒産などの経営難に
出展企業のほとんどを占める全国の中小企業は、優れた製品を持っていても、十分な販売網を持たないため、「何万人ものバイヤーが買付けのために来場する展示会」を年間最大の営業の場にしている。従って展示会が中止になれば、中小企業は売り上げを激減させ、倒産など経営難に陥る。
③ 企業の営業権を奪い、補償などの問題に発展
日本でも、世界中でも、展示会は毎年1回、長年にわたり開催され、企業の恒例スケジュールに入っている。従って、代替地を用意しない展示会の中止は、出展企業の営業権を奪い、補償などの問題が起きかねない。
④ 直接経済効果5,000億円が消滅
年間300本の展示会は、装飾、電気、マンパワー、ホテル…など約1,000社の関連企業に年間3,000億円(東京ビッグサイト公式発表)、20ヵ月間で5,000億円の経済効果をもたらしている。展示会が中止になれば、経済効果を消失させると同時に、中小の展示会支援企業を倒産させる恐れがある。

日展協が要望する変更内容とは

日展協はメディアセンターに関する2つの選択肢として、コスト面と五輪後の問題点から比較した案を展開しています。

日本展示会協会 公式声明文より/比較案

www.nittenkyo.ne.jp

公式声明文によれば、B案は、「新しいメディアセンターを建設することによりオリンピックを成功に導くと同時に、例年通り500本の展示会を開催でき、出展企業の5兆円の売上を確保し、1,000社の展示会関連企業の倒産を防げる。また、五輪後には新しいメディアセンターを展示会場に転用し、ビッグサイトの面積不足を補い、同時に屋根つきの防災拠点にすることもできる」として、 新しい建設場所と規模も合わせて明記しています。

日本展示会協会 公式声明文より/建設場所と規模

www.nittenkyo.ne.jp

まとめ

東京ビックサイトをメディアセンターに使用するとなると、

1. 展示会開催による経済効果(国・都にとっては税収)のロス
2. 国内企業とりわけ中小企業のビジネスチャンスロス
3. 海外からの来場者・出展企業の他国開催展示会への流出(ロス)

の3つのロスが懸念されます。

筆者自身も数年前に出展サイドの企業の一員として、某展示会に関わったことがありましたが、開催期間中の数日間で年間売上の20%にあたる商談がそこから発生した経験をしており、2.に記載したとおり中小企業にとっては死活問題になる可能性を孕んでいるように思います。

五輪エンブレム問題や新国立競技場問題と同じように早期に問題が解決し、5年後、東京ビックサイトで行われる展示会と東京オリンピック・パラリンピックが盛大に開催されることを心から望みます。