むしむしと嫌な天気が続くこの頃。湿った空模様は一日の気分を憂鬱にさせ、外出する気力をむしり取ってしまいます。
 そんな梅雨の日々は、自宅でゆっくり読書をするのも一手。窓ガラスを叩く雨音を聴きながら、落ち着いてページをめくってみる。普段忙しいあなたにとって、たまにはゆっくりすごすのもありかもしれません。
 ここに3冊、梅雨のジメジメを吹き飛ばす、爽快な小説を用意しました。1冊目の『空飛ぶタイヤ』は、弱者の反撃がとっても爽快。2冊目の『ホワイトアウト』は、主人公がかっこいい!快刀乱麻の活躍はスカッとします。3冊目の『サウスバウンド』は、誰もが声に出して言えない「間違ったこと」をズバズバ指摘しまくります。気持ちが晴れるこの3冊で、暗い天気を乗り切りましょう!

空飛ぶタイヤ 著者:池井戸潤

画像1: bookclub.kodansha.co.jp

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 運搬会社を営んでいる赤松四郎は、ある日自社のトラックの脱輪事故により、一人の女性が死傷したというニュースを耳にする。一体なぜ脱輪したのか。調査に乗り出した赤松は、車両整備にもドライバーにも問題がなかったことを突き止める。決して起こるはずのない脱輪。しかし、動かしがたい事実が、じわじわと赤松を追い詰めていく。
 不況に喘ぐ運送業界で、さらに取引先から受注を切られる赤松運送。まさに青息吐息の状況下で、赤松は一つの疑惑に到達する。
 車両整備に不備があったのではなく、トラック車自体に問題があったのではないか…?
調査を進める赤松は、大企業が覆い隠す、驚くべき不正に突き当たる!
 
 この小説は、ジメジメとした梅雨の季節から物語の幕が上がります。家庭も、会社も、とことんまで追い詰められる主人公の心には、ずっと雨雲がかかったまま。大企業の汚いやり口と傲慢な態度に読んでるこちらが怒り震えますが、最後に必ず光が差し込みます。ページを繰り終えたそのときには、きっと赤松社長と一緒に、ガッツポーズを振り上げていることでしょう。

ホワイトアウト 著者:真保裕一

画像: www.shinchosha.co.jp

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  新潟県の山奥にのっそりと存在する「奥遠和ダム」。日本最大の貯水量を誇るこのダムが、突如テロリストたちに占拠される。自動小銃、「カラシニコフ」をダム所員の頭に突きつけて、テロリストたちが政府に要求した金額はなんと50億円。政府とのやり取りの中で、一人、また一人とカラシニコフの犠牲になる所員たち。強力な吹雪により閉ざされたダムには、どこにも逃げる場などなかった。
 そんな中、唯一テロリストから逃れた所員、富樫輝男が立ち上がる。仲間を守るため、自分を守るため、そして何より、自分の過失で死んでいった親友との約束を守るため。一人の勇気ある所員とテロリストとの戦いが、豪雪の中で火蓋を切った。
 
 これ以上緊迫感のある小説はない、と断言できるほどの傑作!天気も、時間も、悩みすら忘れて夢中になること間違いなしです。もちろん、アクションだけでなく、読者を裏切る緻密な計算も盛り込まれてます。ミステリー映画とアクション映画を混ぜ合わせて小説にしたようなこの一本に「梅雨のジメジメ」が入り込む余地はありません!

サウスバウンド 著者:奥田英朗

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 小学六年生になった上原二郎は、中野区在住の都会っ子。わんぱくで大食らいで、ちょっと恥ずかしがり屋な彼には、元過激派の父親がいた。父はこの国が大嫌い。税金は払わないし、学校には怒鳴り込むし、仕事はしないしで無茶苦茶だ。都会っ子の次郎には、歯に衣着せずに、言いたいことは何でも言う父親が恥ずかしかった。
 そんな二郎に事件が降りかかる。二郎が友達のために、いじめられっこに振るった拳が、学校で問題になってしまったのだ。正しいことを貫いた二郎。白い目を向ける世間を相手に、ついに父親の“決意”が下される。
 誰もが他人の目を気にして、間違ったことに“NO”と言えない昨今。本当の強さとは何なのか。ハチャメチャだけど馬鹿でかい、父の背中を見て育つ少年の教養小説。

 おかしいことにおかしい、と言えないこの時代。二郎のお父さんの姿が、私たちの鬱憤を代弁してくれるような気がします。正々堂々、逃げも隠れもしない態度は読んでてとっても気持ちが良い!世間体を気にしてばかりな現代人の、肩の力を抜いてくれる。そんな素敵な小説です。

終わりに

いかかでしょうか?どの作品も、読み始めたらページをめくる手が止まらなくなるでしょう。そして最後には、爽快な気分で読み終われます。暗雲立ち込める天気も忘れて、自室で物語に耽るのもありかもしれませんよ。

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